犬種・猫種別

犬種別の遺伝性疾患と備え方は?遺伝子検査でできる予防的ケア

執筆・編集: うちの子のかかりつけ編集部

犬の遺伝性疾患は「犬種ごとにかかりやすい病気の傾向」があり、あらかじめ知っておくことで、定期健診で重点的にチェックする項目や、生活で気をつけるポイントを早めに準備できます。結論として、遺伝性疾患は完全に防げるものではありませんが、「かかりやすい傾向を知り、早く見つけて、うまく付き合う」ことが、愛犬の健やかな時間を長く保つ最大のコツです。この記事では、犬種別に多い遺伝性疾患、遺伝子検査でどこまで備えられるか、日ごろの予防的ケアまでを整理します。傾向はあくまで参考であり、実際の診断・治療は必ず獣医師に相談してください。

そもそも遺伝性疾患とは?なぜ犬種で偏るのか

遺伝性疾患とは、遺伝子が変異することで引き起こされる病気で、変異した遺伝子(疾患原因遺伝子)が親から子へ受け継がれることで発症の傾向が伝わっていきます。純血種では、特定の見た目や性質を保つための交配が重ねられる過程で、変異した遺伝子がその犬種に「固定」されやすく、結果としてその犬種に多い遺伝性疾患が生まれると考えられています。

埼玉県獣医師会の解説によれば、現在211の犬の遺伝子異常が明らかになっており、約50の病気で遺伝子診断が可能とされています。つまり「かかりやすい傾向」を事前に把握できる時代になってきているということです。ただし、傾向があること=必ず発症すること、ではありません。過度に不安になる必要はなく、「知って備える」ことに意味があります。

犬種別に多い遺伝性疾患の傾向

人気犬種を中心に、報告されることの多い遺伝性疾患の傾向を整理します。あくまで一般的な傾向であり、その子が必ずかかるわけではありません。日ごろの観察と定期健診のヒントとしてご覧ください。

犬種(例) 報告の多い遺伝性疾患・体質の傾向
トイプードル 膝蓋骨脱臼、進行性網膜萎縮症(PRA)、流涙症、外耳炎になりやすい体質
チワワ 膝蓋骨脱臼、水頭症、僧帽弁閉鎖不全症(シニア期)、気管虚脱
ミニチュアダックスフンド 椎間板ヘルニア、進行性網膜萎縮症、皮膚疾患
柴犬 アレルギー性皮膚炎(アトピー)、緑内障、GM1ガングリオシドーシス
フレンチブルドッグ・パグ等の短頭種 短頭種気道症候群、皮膚のトラブル、暑さに弱い体質
ゴールデン・ラブラドールレトリーバー 股関節形成不全、進行性網膜萎縮症、外耳炎
ウェルシュ・コーギー 変性性脊髄症(DM)、椎間板ヘルニア
キャバリア 僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)

このように、犬種によって注意したい部位や病気の傾向はさまざまです。とくにトイプードルは人気が高く、かかりやすい病気を知っておきたい飼い主さんが多い犬種です。詳しくはトイプードルがかかりやすい病気もあわせてご覧ください。

遺伝子検査で「備える」とはどういうことか

犬の遺伝子検査は、こうした遺伝性疾患の原因遺伝子を持っているか(保因しているか)の傾向を、症状が出る前に調べる手がかりになります。とくに、進行性網膜萎縮症(PRA)や変性性脊髄症(DM)など、特定の遺伝子変異が関係する病気は、検査で傾向を把握しやすい代表例です。

ただし重要なのは、遺伝子検査はあくまで「傾向」を示すものであり、病気を診断・予防・治療するものではないという点です。「リスクあり」と出ても必ず発症するわけではなく、「リスクなし」でも他の要因で病気になることはあります。検査結果は、獣医師と「どこを重点的に見ていくか」を相談するための材料として活用するのが正しい使い方です。遺伝子検査の基本的な仕組みや費用は犬の遺伝子検査でわかること・費用・受け方の基本で解説しています。

子犬と獣医師広告犬種の傾向とあわせて、遺伝的な体質を知る手がかりに犬の遺伝子検査【Pontely(ポンテリー)】。自宅の綿棒採取で祖先犬種や遺伝的な傾向を確認。検査内容・料金は公式サイトでご確認ください。犬の遺伝子検査を見る →

部位別に見る、よくある遺伝性疾患

犬を抱く獣医師

犬種をまたいで見られる遺伝性疾患を、体の部位ごとに整理すると、日ごろどこを観察すればよいかがわかりやすくなります。

部位 代表的な遺伝性疾患(例) 気づきのサイン(例)
目 進行性網膜萎縮症、遺伝性白内障、緑内障 暗い場所でぶつかる、目が白い、まぶしがる
関節・骨 膝蓋骨脱臼、股関節形成不全 後ろ足を上げて歩く、スキップのような歩き方、動きを嫌がる
神経・脊髄 椎間板ヘルニア、変性性脊髄症 ふらつく、後ろ足の力が入らない、抱くと痛がる
心臓 僧帽弁閉鎖不全症、動脈管開存症 咳、疲れやすい、安静時の呼吸数が増える
皮膚 アトピー性皮膚炎、アレルギー かゆがる、赤み、脱毛、繰り返す外耳炎

いずれも「いつもと違う」に早く気づくことが大切です。心臓病に多い「安静時の呼吸が速い」変化などは、家庭でも観察できます。関節や皮膚のトラブルは、生活環境や体重管理で負担を減らせる面もあります。

遺伝性疾患に備える予防的ケア

遺伝性疾患そのものを完全に防ぐことは難しいですが、発症や進行の負担を減らすための「予防的ケア」はできます。犬種の傾向を踏まえた日々の工夫が、いざというときの余裕につながります。

  • 定期健診を習慣に: 若いうちから年1回、シニア期は半年に1回など、こまめな健康チェックで変化を早期に把握する。犬の健康診断の費用と内容も参考に
  • 適正体重の維持: 肥満は関節・心臓・呼吸すべての負担になる。フードの量は獣医師と相談して調整する
  • 関節にやさしい環境: 膝や腰に不安のある犬種は、床の滑り止め、段差の緩和、過度なジャンプを避ける工夫を
  • 皮膚・被毛のケア: アレルギー体質の犬種は、こまめなブラッシングや適切なシャンプー、環境の見直しでトラブルを減らす
  • 気づいたら早めに相談: 「様子見」で悪化することもある。いつもと違うサインは早めに動物病院へ

こうした予防的ケアは、犬種の傾向や遺伝子検査の結果を踏まえると、より的を絞りやすくなります。「うちの子はこの部位に気をつけよう」という視点が持てると、日々の観察がぐっと具体的になります。

早期発見のために家庭でできる観察

遺伝性疾患の多くは、「いつもと違う」に早く気づくことが、その後の負担を軽くする第一歩です。特別な道具はいりません。日常のなかで、次のようなポイントを意識して観察しておきましょう。

  • 歩き方・動き: 後ろ足を上げて歩く、スキップのような歩様、段差やジャンプを嫌がる。関節や神経のサインのことがある
  • 目の様子: 暗い場所でぶつかる、目が白っぽい、まぶしそう。目の遺伝性疾患の初期に気づく手がかり
  • 呼吸・咳: 安静時の呼吸が速い、咳が続く、疲れやすい。心臓や気道のサインのことがある
  • 皮膚・耳: かゆがる、赤み、脱毛、外耳炎を繰り返す。アレルギー体質の犬種で注意
  • 食欲・元気・体重: 食欲や元気の変化、急な体重の増減。全身状態を映す基本のサイン

これらは毎日いっしょに暮らす飼い主さんだからこそ気づける変化です。スマホで歩き方や呼吸の様子を動画に撮っておくと、受診時に獣医師へ状況を伝えやすくなります。「様子見」で悪化することもあるため、迷ったら早めに相談するのが安心です。

健全な繁殖と遺伝性疾患の関係

遺伝性疾患を社会全体で減らしていくうえで欠かせないのが、健全な繁殖への取り組みです。埼玉県獣医師会の解説でも、疾患原因遺伝子を持っている犬を繁殖に使わないことが、遺伝性疾患を少なくするためにとても重要とされています。

日本は、無秩序な繁殖などを背景に、犬の遺伝性疾患が比較的多い国とも指摘されています。だからこそ、これから犬を迎える方は、次のような点に配慮した入手先を選ぶことが、遺伝性疾患への大切な備えになります。

  • 親犬の健康管理・遺伝子検査に配慮しているか: 繁殖に使う犬の健康状態を確認している
  • 飼育環境が清潔で、社会化に配慮しているか: 健康と気質の両面に影響する
  • 迎えたあとの相談に応じてくれるか: 健康面のフォロー体制があると安心

迎える段階での選択が、その子の生涯の健康に関わります。すでに一緒に暮らしている場合も、犬種の傾向を知って定期健診と観察を続けることが、最良の備えになります。

迎える前・迎えた後にできること

これから犬を迎える場合と、すでに一緒に暮らしている場合とで、備え方の重点は少し変わります。

タイミング できること
迎える前 その犬種に多い病気を調べておく。親犬の遺伝子検査や健康状態を確認しているブリーダー・団体を選ぶ
迎えた直後 早めに動物病院で初回健診を受け、かかりつけを決める。体質や気になる点を相談する
一緒に暮らす中で 定期健診を続ける。犬種の傾向を踏まえて生活環境を整える。必要に応じて遺伝子検査で体質を把握する

とくに繁殖の現場では、疾患原因遺伝子を持つ犬を繁殖に使わないことが、遺伝性疾患を減らすうえでとても重要とされています。迎えるときは、健康管理に配慮した信頼できる入手先を選ぶことも、遺伝性疾患への大切な備えの一つです。医療費が心配な方は、シニア期を見据えたシニア犬の医療費はいくら?や、ペット保険は必要かもあわせて検討してみてください。

遺伝性疾患が気になるときの受診・相談の目安

「かかりやすい病気があると知って不安になった」という飼い主さんは少なくありません。ですが、傾向を知ったからといって、すぐに大がかりな検査が必要になるわけではありません。次のような段階で考えると、落ち着いて対応できます。

状況 おすすめの対応
症状はないが犬種の傾向が気になる 次の定期健診で獣医師に相談し、重点的に見てもらう項目を決める
遺伝子検査で「リスクあり」が出た 報告書を持参して受診。発症の有無や、今後の観察ポイントを相談する
気になるサインが出ている 様子見をせず早めに受診。動画や記録を持参すると診察がスムーズ
急な歩行異常・呼吸の乱れ・けいれん 緊急性が高い可能性。夜間でも動物病院へ連絡する

遺伝性疾患の多くは、早く見つけて適切に対応するほど、その後の負担を抑えやすくなります。関節炎など進行性の疾患は、若いうちからのケアが将来の重症化予防につながることも指摘されています。「知って、備えて、早めに相談する」という流れを習慣にしておきましょう。夜間・救急の連絡先の探し方は夜間に動物病院へかかる方法も参考になります。

遺伝性疾患への「お金の備え」も考えておく

遺伝性疾患は、治療や定期的な検査が長期にわたることもあります。だからこそ、健康なうちから「お金の備え」も一緒に考えておくと安心です。

  • 定期健診の費用を見込む: 若いうちは年1回、シニア期は半年に1回など、継続的な費用がかかる
  • ペット保険の検討: 遺伝性疾患の扱いは保険会社・プランによって異なる。加入前に補償範囲をよく確認する
  • 治療が長引く前提で考える: 慢性疾患は一度きりでなく継続的な通院・投薬になることがある

ペット保険は、加入のタイミングや既往症の扱いによって条件が変わるため、早めの検討が有利になることがあります。必要性の考え方はペット保険は必要か、シニア期の医療費全体の見通しはシニア犬の医療費はいくら?もあわせてご覧ください。まだかかりつけがない方は、お住まいの地域から動物病院を探すところから始めましょう。

よくある質問

犬種でかかりやすい病気があるなら、必ず発症しますか?

いいえ。犬種ごとの「かかりやすい傾向」はありますが、必ず発症するわけではありません。傾向を知っておくことで、定期健診で重点的にチェックしたり、生活で気をつけたりと、早めに備えられるのが利点です。

遺伝子検査を受ければ、遺伝性疾患を予防できますか?

いいえ。遺伝子検査は病気を予防・治療するものではなく、原因遺伝子を持っているかどうかの傾向を示す手がかりです。結果は、獣医師とどこを重点的に見ていくか相談するための材料として活用してください。

ミックス犬でも遺伝性疾患に注意が必要ですか?

ミックス犬は複数の犬種の性質を受け継ぐため、祖先の犬種によっては特定の疾患に注意が必要な場合があります。犬種構成を知りたいときはDNA犬種鑑定が手がかりになります。詳しくはMIX・雑種犬の犬種・ルーツを遺伝子検査で調べるをご覧ください。

何歳から遺伝性疾患に気をつければよいですか?

関節や目の疾患は若いうちから、心臓病などはシニア期から目立ちやすくなる傾向があります。年齢を問わず、若いうちからの定期健診と、犬種の傾向を踏まえた観察を習慣にするのがおすすめです。

親犬の情報がわからない保護犬でも備えられますか?

はい。ルーツが不明でも、初回健診で体質や気になる点を獣医師に相談し、定期健診を続けることで備えられます。必要に応じて遺伝子検査で犬種構成や体質の傾向を把握するのも一つの方法です。

気になるサインがあったら、まず何をすべきですか?

「いつもと違う」歩き方・呼吸・皮膚の様子などに気づいたら、様子見をせず早めにかかりつけの動物病院へ相談してください。動画や記録を持参すると、獣医師が状況を把握しやすくなります。

まとめ:犬種の傾向を知り、早めに備える

犬の遺伝性疾患は、純血種を中心に「犬種ごとにかかりやすい傾向」があります。トイプードルやチワワの膝蓋骨脱臼、ダックスの椎間板ヘルニア、キャバリアの心臓病など、犬種によって注意したい部位はさまざまです。こうした傾向を知っておくことで、定期健診で重点的にチェックする項目や、生活で気をつけるポイントが具体的になります。

遺伝子検査は、原因遺伝子を持っているかどうかの傾向を、症状が出る前に把握する手がかりになります。ただし、それは「傾向」であって診断ではありません。遺伝性疾患を完全に防ぐことは難しくても、「かかりやすさを知り、早く見つけて、うまく付き合う」ことはできます。定期健診・適正体重の維持・環境の工夫といった予防的ケアを日々続け、気になるサインや検査結果があれば、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。それが、愛犬と穏やかな時間を長く過ごすための最良の備えです。犬種の傾向はあくまで「地図」のようなもので、その子自身の日々の様子を見て、獣医師と二人三脚で健康を守っていく姿勢が大切です。まだかかりつけがない方は、お住まいの地域から動物病院を探すところから始めましょう。

出典・参考情報

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、獣医療行為・診断に代わるものではありません。犬種別の傾向・遺伝子検査の結果はあくまで確率的なものであり、病気の発症を保証・否定するものではありません。気になるサインや検査結果は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。掲載の内容・サービスは変更される場合があります。

お住まいの地域の動物病院を探す 全国4,600件以上から、うちの子に合ったかかりつけ医を見つけましょう。

動物病院を探す